ChatGPTが話題だ。AIの進化によって、今の常識が大きく様変わりすることは間違いない。だが、忘れてはならないのは、AIだけではない。移動通信システム5Gの普及や新たなプラットフォーマーの台頭も、私たちの生活を根底から変えていく。特に「買い物」は、これまでとは全く違った体験になっていくだろう。
まず、コロナにより、人々は店に行かなくなり、出向く必要もなくなった。キャッシュレス化により、現金を持ち歩くことなく、顧客の購買履歴などを基にした機械学習アルゴリズムによって、オンラインの画面上でオススメしてくる商品を買うようになった。また、日用品などの決まった商品の購入に関しては、定期便サービスを活用することで、「買い物」に費やしていた時間を短縮させ、別のことに使えるようにもなった。
つまり、一部の買い物は、すでに「楽しいもの」ではなく「面倒なもの」へと意識が変化したのである。「店に行くこと」「店内を巡って商品を選ぶこと」「店員とやりとりすること」「レジに並んで決済すること」「包装が終わるのを待つこと」「荷物を持って帰ること」といった一連の体験は、「面倒なもの」だという認識に変わったのである。そのため、サブスクを活用して自動的に届けられるサービスを利用することで、時間効率を重視するようになった。今後はIoTにより、冷蔵庫の食材が減れば、ストックが切れる前に自動的に送られるようなことが当たり前になっていくだろう。
では、すべての買い物が「楽しいもの」ではなくなるかといえば、もちろんそうではない。「ここ」でしか体験できない買い物は、SNSやYou Tubeなど、デジタル上にアップロードすることを目的に、これからも人気を集めるだろう。
だが、注目すべきは、その先だ。これからの「楽しい」買い物とは、私や夫が運営するそれぞれのオンラインコミュニティやライブ配信などでは、すでに起こっていることだが、サービス提供者と消費者の「境界線がなくなる体験」を指すようになる。これは、共通の価値観やテーマに関心を持つ人同士がオンライン上で集まる「コミュニティ」内で、消費者はサービス提供者と一緒に、「ほしいもの」を「ほしい人」を集めて、「共同して創っていく」ことである。
そして、「購入前」「購入時」「購入後」のすべてをオンライン上で「共有」する一連のプロセス体験すべてが、「楽しい」買い物になるのである。つまり、全員がインフルエンサーであり、商品開発者であり、営業マンであり、消費者に「同時」になる市場が誕生しているのである。
これらの一連のプロセスでは、単なる消費以上の体験ができるため、人々は複数のコミュニティに所属し、複数の商品やサービスのクリエイターとして、PR担当として、利用者として、新しい買い物スタイルを楽しむようになる。彼らはもはや欲しい情報を求めて「検索」をしない。なぜなら、欲しい情報は、AIが自動的に集めて、整理してくれるだけでなく、自分がつながっている人たちやアプリから最新情報を得て、それに関するより詳しい情報はコミュニティのチャットやレビュー動画でチェックするからだ。
「誰が」「なぜ」その商品やサービスを作っているのか?が重要になり、その「物語が共有」され、「共感」されることでビジネスが成り立っていく。どんな「物語」なのかが魅力の違いになり、「誰が」「誰と」コラボし、「どう作るのか」で影響力に差が出てくる。
「買い物」がこのような一連のプロセス重視になる以上、これからは、すべてがオンライン上にさらけ出されることになる。つまり、商品を購入して実際に使用している日常生活が他者と共有され、商品を企画・開発して提供するビジネス部分も共有されるので、この二つの境界があいまいになる。言い換えれば、これからは公私の境目や、提供者と消費者の境目をむしろあいまいにし、それらの相反すると思われていたものを融合し、共創したものが勝者になっていくのである。つまり、これまでとは、ビジネスのルールが完全に変わったのだ。
四条は、常に新しいものに挑んでいくパイオニア精神を重視してきた。100年に一度と言われるほどルールが大きく変わる今、四条繁栄会には、どこよりも起業家精神を発揮して、この新しく台頭してきた時代をリードしてほしいと願う。
文:赤城 賀奈子(あかぎ かなこ)
イラスト:たつみ まさる